書店ゲーム
2024.12.17
書きたいが書けるに変わる創作講座 受講生対談vol.1
児童文学作家 佐々木智子さん×関西大学文学科 1回生 野崎亮太さん
自伝も文学賞も夢じゃない!世代を超えて響き合う創作の喜び。
スタートアップカフェ大阪が実施する起業プロジェクト「書店ゲーム」。書店をゲームのように楽しむ企画の一環として、シェア型書店の運営や、創作講座『書きたいが書けるに変わる創作講座』を開催しています。『書きたいが書けるに変わる創作講座』には、「書きたい」という想いを持ったさまざまな人が集い、現役編集者の大槻慎二先生の下、小説やエッセイの書き方を学んでいます。1年をかけて、出版に向けた三つの作品創作に挑戦しているのです。そんな講座も4月のスタートから半年が経ち、第一作目がTSUTAYA BOOKSTORE 梅田 MeRISEの店頭に本として並ぶという節目にたどり着きました。
そこで今回は、受講生のなかで最年長である、85歳の児童文学作家 佐々木智子さんと、最年少の19歳、関西大学1回生の野崎亮太さんの対談を実施。講座に来た動機や、参加されて感じたこと、共に学ぶ仲間についてなど、自由に語り合っていただきました。
聞き手・構成/ぶんたま(笹間聖子)
「綺麗ごとではないことも書きたい」
―まずは、お二人が講座に参加した理由を教えてください。
野崎/昔から、夏目漱石やエドガー・アラン・ポー、ドストエフスキーなど、気になった作家の本を片端から読んでいました。大学に入ったら小説を書きはじめようと考えていたところ、この講座の存在を知ったんです。プロの編集者である大槻慎二先生に作品を見てもらえるし、書いたものが本という形になると聞いて、とてもいい機会だと思いました。ところが入ってみたら、佐々木さんのようなプロがいて驚きました。
佐々木/私は57歳で初めて書籍を出してから、これまでずっと児童文学作品を書いて来ました。児童文学を書く上では、あまり汚い世界は描きません。ですが今になって、もう少し人間の内面も描きたいという想いが生まれてきたんです。歳を取ってきて、人間の綺麗ごとではないところも描いてみたいなと。その描写力を学ぶために来ました。
野崎/綺麗ごとではないところというのは?
佐々木/自伝みたいなものです。若い頃は保育士をしていたんですが、ある日交通事故に遭ってしまい、33日間生死を彷徨ったんです。それで目覚めたとき、「生きた証を子どもたちに残したい」と思ったことが、作家人生への入口でした。けれど基礎がなかったので、そこから初出版まで16年間、たくさんの講座や講演会で必死に学びました。そうそう甘い世界ではなかった。そんな、自分では波乱万丈だと感じている人生を書き残しておきたいと思っています。
「曖昧と不思議は違う」
―大槻先生の指導をどのように感じていますか。
佐々木/これまでお付き合いしてきた児童文学の編集者さんは全く違います。その方は、内容についてはほとんどおっしゃらなかったんです。一方で、時代に合わせた言葉選び、点や丸について、読む子どもの年齢層に合わせた漢字使用の範囲などについては、こと細かくチェックしてくださいました。一方で大槻先生は、内容についてもアドバイスをいただいて、「ああ確かに」と感じることがあります。
野崎/アドバイスが的確ですよね。
佐々木/そうなんです。私が特に腑に落ちたのは、第一稿への「視点が揺れている」というご指摘です。私の作品に出てくる孫娘と祖母の会話で、祖母が主人公なのに、いつのまにか孫の視点になっている部分があるとおっしゃいました。「そんなはずはない」と思って読み返したら、本当に孫の内面まで祖母が語っていたんです。いつもは子どもの視点で書いているから、自然にそうなっていたんだというのは大きな気づきでした。
野崎/僕も、自分が書いている文章をどうしても主観的に見てしまうので、読者目線でアドバイスをいただけるのがうれしいです。どういうところに読者が違和感を感じるか、どこに引っかかるのか、毎回分かりやすく教えていただけるので助かっています。
佐々木/印象に残っている言葉はありますか。
野崎/「曖昧と不思議は違う」ですね。大槻先生は、第一稿の講評で僕の作品を「不思議な作品」だと評されたんです。自分の作品は展開の中にフィクションを含んでいるので、当初は、「あまり現実的ではない展開が繰り広げられる」という意味だと理解していました。でも後で1対1でお話ししたら、不思議というのは、「主人公の状況や年齢、家族などのディティールが描かれていないから、不思議になってしまっている」という意味だったんです。
佐々木/リアリティがなかったということ?
野崎/「なにが起こっているか」は分かるけれど、「なんでそれが起こっているか」「なぜ主人公がそう思ったのか」を考えるための材料が足りない状態になっていると。そこで大槻先生が教えてくれたのが、「曖昧と不思議は違う」という言葉です。曖昧は、わざと展開をはっきり書かずに読者の想像の余地を残している状態。不思議は、必要な情報が足りない状態。編集者である大槻先生だからこそ、そこを言語化してくださってありがたかったです。
「平易な言葉を、もう一度表現したい言葉に」
―講座で小説を書いてみた感想を教えてください。
野崎/基本的には楽しいんですけど、詰まることもありました。僕は最初に、「中学時代の自分の思いを書きたい」と思っていたのですが、いざ書くとなると、そのときの気持ちを完全には思い出せない。少し異質のものになってしまっていて。それでもなんとか書くけれど、なかなかうまく形にならないし、書けば書くほど遠のくというか……。一作目を大槻先生をはじめ、いろいろな方に読んでいただき感想をもらって、より課題が山積みになっています。
佐々木/一番大きな課題はなんですか?
野崎/「分かりやすい文章」の割合を増やすことです。1つ目の小説を提出後、ある現代作家の小説を読んでいたら、「平易で分かりやすい表現」と「光る、二度読みたくなる表現」の割合が設計されていることに気づいて。誰でも1回で分かる文が8割、光る文が1割、残りはその中間。そうすることで、光る文章がより際立つんだなと。僕はそれを意識せず、なるべく自分が気にいった表現を使っていたので、読むのに疲れるものになってしまった気がしています。
佐々木/児童文学は子どもが読めるくらい平易な、やさしく分かりやすい文章が基本なので、一旦辞書を引いて平易な言葉にしてから、さらに、私が表現したい言葉に書き直しています。
野崎/それでかもしれないですが、佐々木さんの作品は、地の文も台詞もゆったりとした調子で進んでいきながらも、随所に独特な表現やオノマトペが使われていますよね。雨が本に落ちてくるシーンで、「水滴がパチパチ跳ねながら」と書かれていたり、台詞のなかでも話し言葉に近い表現を使われていたり。気になる言葉がところどころに散りばめられて彩っているからこそ、魅力的な文章になっているんだなと感じています。
佐々木/ありがとうございます。私の課題は、書く時間を捻出することですね。元々、ちょっとずつ計画的に書くことができない性分なので、いつも締め切りギリギリに絞り出しています。だから文章を書いていて一番楽しいのは、構想を練っているときです。「この人物をこういうふうにして、ああいうふうにして」と頭の中で考えているときが一番楽しい。長い間そうして、主人公が頭の中に入ってこないと書けないんです。
「人生をどれだけ深く感じているかが大事」
―お二人の年齢は66歳違います。幅広い世代、立場の同級生と接してみていかがですか。
佐々木/若い方や学生さんと接する機会が滅多にないので刺激を受けています。みなさんの作品を読んでいて、すごいなと感じる表現もあります。そもそも、人を惹き付ける、読ませる文というのは、その人の痛みがどれだけ深いかで決まるのではないかなと思います。もちろん、文章には技術も必要ですけれど。その人が持つ、痛みや悲しみを感受する力、人生をどれだけ深いところまで感じているのかが大事なんだなと学んでいます。
野崎/僕は他の方の作品を読んで、自分はテーマに対して近視眼的になっていたんだなと気づきました。他の方の作品では、自分や家族について書くときも、ひと通り考えて熟成しているというか。落ち着いてテーマに向き合っている感じがするんです。それが良い悪いではなく、向き合い方は人それぞれなんだなと。同じようなテーマでも、解釈が全く違いますし。改めて、「書くことは人にとって異なる意味を持っている」と実感しました。
佐々木/他の方の講評で参考になることもありますよね。
野崎/どういうふうに書いたら、どう切り取ったらその場面が魅力的になるか……といった指摘はかなり参考にしています。例えば人物について書くときに、人物の特徴について列記するのではなく、なにか一点を書く。よく覚えているのは、「おばあちゃんを書くときに、手のシワの描写をする」みたいなお話なんですけど。確かにそうしたほうがぐっと魅力的になるなと。
「一貫した姿勢がかっこいい」
―創作講座はあと半年ありますが、その後の目標はありますか。
野崎/文学賞の受賞です。いずれプロの作家として書きたいので、なるべく大きな賞にトライしていきたいですね。講座で書いた1作目も、「織田作之助青春賞」という文学賞に応募しています。
佐々木/大いに羽ばたいてください! 私は野崎さんと全く違うコースで作家になっていて、早くから賞は目指さなかったんです。賞を目指すのは時間がかかりますし、受賞できずに筆を折ってしまう作家さんもたくさんいます。それなら私はもっと身近な、自分が書ける範囲の問題を書いていきたいなと考えていて。あまり光の当たらない人を描いて、その存在を社会に知ってもらう。そういうところに私の役目があるんじゃないかなと。
野崎/佐々木さんは児童文学作品をたくさん出版されていて、十分すごいと思います。講座で書かれた一作目にも現れていると思ったんですけれど、作品の先に見ているものがあるというか。先程もおっしゃっていた通り、「自分が書いた小説を子どもに託したい」という姿勢が感じられました。一貫して、そこを見据えて書かれているのがかっこいいなと思っています。
佐々木/それが私の書き方というか、生き方みたいなものなんです。これからも、自分が書くものは自分で選びます。講座の作品もそうで、一作目、二作目でもテーマにしている『アンネの日記』は、アンネと私の一方的な約束のお話です。それを果たせずこの歳まで来てしまった罪悪感というか、葛藤を描きたいと思っているんです。それから、あと4冊児童文学で下書きしている作品があり、自伝などもありで、合計6作品はなんとか書き上げたいですね。
野崎/これからも、かっこいい背中を見せてください。
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