『障がいや病気と向き合う人たちの暮らしの選択肢を広げる』山本高史、起業のリアル | スタートアップカフェ大阪

起業家インタビュー

2019.11.14

STARTUPREAL

『障がいや病気と向き合う人たちの暮らしの選択肢を広げる』山本高史、起業のリアル

山本高史(ヤマモト タカシ)(36)ー

家族の障がいをきっかけに起業を決意。

個人事業として、障がいや病気と向き合う人向けのコンシェルジュ事業を開始。

2018年9月、障がいや病気などに関する配慮情報検索システムなど法人向けサービスの展開により、事業拡大が想定されるために法人化。

現在、おもいやりデザイン合同会社を経営している。

小さな声を纏めるマーケティング&セールス

ー 現在はどういったお仕事をされているのですか?

障がいや病気と向き合う方向けのマーケティングとセールスを仕事にしています。

具体的には、大手不動産企業などに対して、日本中の障がいや病気などの配慮情報を検索できる「おもいやり検索」というソフトウェアを企業に提供しています。

例えば、「学習障がいのある人が試験を受ける場合、試験時間を延ばした方がいいのか」などの配慮事項をソフトウェアを使って事例収集することで、企業の疑問を解決することが可能です。

 

ー 「おもいやり検索」ですか。企業もそういった情報を求めているんですね。

企業の顧客や従業員の中には、10人に1人や2人障がいや病気、それに近い特性を持っている人がいて、その人にどう対応すればいいのかわからないという企業の課題があります。

そして、そういった課題に企業が対応することができていなければ、障がいや病気と向き合う人たちはその会社や施設を利用しないことに繋がってしまいます。

 

ー 障がいや病気と言っても範囲が広いと思いますが、どこかに特化しているんでしょうか?

おもいやりデザインでは、特定の障がいや病気に絞ってはいません。ここが僕たちの網羅性という強みでもあります。

数十億とある情報を目次(インデックス)化して厳選する、クローリングという技術を使うことで、求める配慮情報を目次(インデックス)化することができます。

例えば、「知覚障がいをもつ方は、エレベーターかエスカレーターかどちらが使いやすいのか」という調査要望があれば、世界中のオンライン情報の隅々まで情報を収集することが可能です。

 

その企業が障がいや病気などのニーズに対応する施策を行ったことの営業サポートもしています。

まとめると、施策を提案する段階のマーケティングとそれを世の中に伝える段階のセールスを提供していて、ひとつひとつの声が小さな障がいや病気などと向き合う人たちを対象にしていることから、小さな声を纏めるマーケティング&セールスと、呼んでいます。

 

起業のきっかけ

ー 起業を考えるきっかけは何かありましたか?

今年で8歳になる子どもが、生まれた時に背中に穴が空いた状態で生まれてきました。それは、国内では1万人に4、5人の割合の脊髄髄膜瘤(二分脊椎症)という病気です。

背中の患部から飛び出した脊椎神経を手術で治す際に、体の中にいくつかの障がいや病気を抱えて生きていくことになりました。

 

その障がいや病気に親として向き合う中で、「病気は治らないが、周囲からのサポートがあれば暮らしていける。生きていける。」ということに気がつきました。

しかし同時に、現在の社会を見てみると周囲のサポートがまだまだ足りないという現実に直面しました。

それなら、もっとそういった特性の方もサポートできる社会に自分が変えていきたいと思ったのが、起業するきっかけでした。

 

ー そんな大きな原体験があったんですね。御子息が生まれてすぐに起業を決意されたんですか?

実は、最初はアイデアもなく、単純に「起業したいな」という気持ちはありました。ベタな話ですね笑

自分が何をすべきかをわからない状態から抜け出すために、2年ほどの間に様々な種類の1,000人弱の方とお会いして助言をいただきました。

 

そんな中で、『スタートアップサイエンス』著者の田所雅之さんに「スタートアップの最初の時期には、内省と顧客が重要だ」という助言をいただき、自分自身や顧客について向き合うことになりました。

改めて振り返ってみると、僕の人生の中で最も影響が大きかったのが子どもの障がいや病気でした。

だから、それをテーマに起業することを決意しました。

 

起業すると決めて一番はじめにしたこと

ー 起業を決めて、はじめにしたことを覚えていますか?

まずはYoutubeでグロービスの動画を見ていました。見まくって、僕だけで再生回数すごく貢献していたと思います笑

起業家の人たちがどういう風に考えているかを知りたいと思って見ていましたが、自分の現状とかけ離れているな、というのが最初の感想でしたね。

 

スタカフェ大阪を利用したきっかけ


ー 山本さんがスタートアップカフェ大阪に来られたのはどういったきっかけだったんでしょう?

グロービスの動画を全部見たし、そろそろ行動したいなと思ったんですよね。

そこで、次は行動できる場所、もっと言うとお金がかからない場所を探して、スタートアップカフェ大阪を見つけて来てみました。

 

その旨をスタートアップカフェ大阪に伝えると最初は「何を言ってるんだ?」という反応でしたが、起業を考えていることやこれまでの背景を話すと、コーディネーターの方が相談に乗ってくださることになりました。

※スタートアップカフェ大阪は、無料の作業スペースではなく、起業相談の場所です。

 

スタカフェ大阪のいいところ

ー それから3年経った今でも山本さんはスタカフェ大阪に来てくださることもありますが、スタカフェ大阪のいいところってどこだと思いますか?

一言でいうと、敷居の低さです。

当時の僕は他のインキュベーション施設は敷居が高く感じていて、起業アイデアの形の整っていない最初の段階でも気軽に相談に乗ってもらうには、スタカフェがよかったですね。

コーディネーターの方には、3ヶ月ほどの間「2週間後に〇〇をしてください」という形で伴走してくれたことも、何をすればいいのかわかっていない時期の僕にはとても心強かったです。

 

今後の展望


ー 事業において、今後の展望を聞かせてください。

僕の中で、「障がいや病気と向き合う方の暮らしの選択肢を広げる」が大きなビジョンです。

これはグローバルなビジョンなので、僕の残りの人生で終わることはないと考えています。

では、僕の残りの人生で終わることのないテーマの中で何ができるかと考えれば、今の「おもいやり検索」に加えて、次は「おもいやり知識基盤(ナレッジシステム)」を作ろうとしているところです。

例えば、企業の営業やお客様センターのスタッフが障がいや病気などの配慮情報を調査できるQ&Aがあったり、企業向けに障がいや病気などの小さな声を纏めたメディアをつくったりと、障がいや病気などと向き合う人たちへのサポート対応や集客の戦略がすぐにわかるシステムです。

このシステムを3年後までに、導入社数300社を目指します。その後は、障がいや病気と向き合う人たちが多くいる中国や韓国をはじめとする東南アジアなどに、同じような知識基盤を販売していく形を描いていますね。

 

障がいや病気はグローバルな人類課題です。

僕たちの事業によって、世界中の人が障がいや病気などの配慮事項を知って頂き、各国のそういった特性と向き合う人たちが暮らしやすい世の中をつくることを目指しています。

 

リアル裏トーク

ー すみません。スタートアップリアルお馴染みの質問で、みなさんが気になることをズケズケ聞いていきたいのですが、ぶっちゃけ事業に失敗しちゃったらどうします?

思っていることを率直に言うと、事業に失敗するというのは自分の中で考えたことがないです。

ただ、もちろんうまくいかないと悩むことはいっぱいありますが、事業が存続不能になることはないと思います。

 

これはycombinatorのPaul Grahamの言葉ですが、「創業者の気持ちが折れた時が失敗」だと思っています。

一時的にキャッシュが尽きたり、仲間がいなくなったりしても、またキャッシュを増やす努力や仲間を集める努力をすればいいだけなので、これは失敗要因にならないんですよ。

自分の場合、気持ちが折れることはない、だから失敗することはないんです。

もちろん、事業や法人格などのかたちは変わるかもしれないですが、ビジョンは変わらずに生きていくと思います。

 

これから起業する方へメッセージ

ー さいごに10代、20代でこれから起業を目指す人に向けて何か伝えたいことはありますか?

正直、羨ましいな、と思っています。

僕の場合は、家族を守るということが第一で、その次に事業のスケールがあります。

もちろん家族がいることがダメなことではないですが、結婚していなければ自分だけの責任でどこまででもリスクを取って挑戦できることがあると思います。

 

逆にいうと、その時期におもいっきりハイリスクなことをしなかったことは、少し後悔です。

若い頃には、おもいっきり自分のやりたいことをアジャイル(素早く)かつスモールにやりまくるということができると思うので、それをやれば起業でも会社に就くときにも絶対に役立つと思います。

あと、人と同じようにやらずに、過剰なくらいに人とは違うやり方でやった方がいいと思います。

ー 山本さん、貴重なお話ありがとうございました!

 

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